ボランティアの支援団体が、避難所で被災者に足湯をサービスしているTV映像を見た。
阪神大震災の活動をベースに生まれた、被災地NGO協働センターによる「足湯隊」である。
小さなたらいにお湯をはり、椅子に座った被災者に足をつけてもらう。
みんな足をお湯に入れた瞬間、あ~~、となんとも心地良さそうな声を出し、表情が柔らかくなる。
自然に言葉が出てくる。会話が弾む。
これぞ、究極の「こころのケア」ではないかと思う。
被災してからしばらくは、みんな緊張しているが、ハイ(過剰覚醒状態)にもなっているので、自分の緊張に気づきにくい。けれども緊張が続きすぎると、体調にも悪影響を及ぼす。だから、初期の「こころのケア」では、被災者たちが自分でできる呼吸法やリラクゼーションを教えたり、適度な体操やストレッチを勧めることが多い。
足湯は、手軽緊張を解くためにはとても有効だ。でも、見ているとそれだけではないことがよくわかる。
足湯は、心の鎧を少しおろし、本音を語りやすくするよい機会になる。
いや、何も語らなくてもよいのだ。自分のことを気にかけてくれる支援者と、ただゆっくり過ごす時間が保証される。被災者も支援者も、口べたでいい。支援者は足湯のそばに座るから、被災者より少し低いところにいる。その位置関係も、とてもいい。目を合わせることさえ、必ずしも必要ではない。ただそばにいること、それを足湯は可能にする。
初期介入としての足湯の効果。研究したら、長期的な心身の健康に、大きな有意差が出そうだ。
そもそも、「こころのケア」というのは、支援者からはアプローチが難しいし、被災者にとってはとっつきにくい。精神的に問題があるように思われるのがいやだ、弱音を吐くのはみっともない、といった思いもあるだろう。日本人は特にそうだと言われる。
けれども、9.11の後のニューヨークの消防士さんたちも、カウンセリングを受けたがる人はほとんどおらず、そのかわり指圧マッサージがとても人気があったと聞いたことがある。足湯というメニューがあったら、それも人気が高かったに違いない。
ネットで公開されている中井久夫先生の文章「災害がほんとうに襲ったとき」を読んでいたら、阪神大震災のとき、「こころのケア」チームは、花を持って避難所をまわったという。とても喜ばれたし、最初に声をかけるきっかけにもなったらしい。
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/shin/shin00.html
足湯か、花か。東北に花が届くのはいつのことか。